あはれてふ情けに恋の慰まば
問ふ言の葉や嬉しからまし
- 歌の意味
-
「あわれだ」という情けによって恋の苦しみが慰められるものならば、見舞ってくれる言葉も嬉しく思えるだろうに。
- 鑑賞
-
恋歌 698
詞書は前の歌に続き「恋」
相手が「かわいそうに」と情けをかけてくれることで、恋の苦しみが慰められるのならば、見舞いの言葉も嬉しく思えるだろう。しかし実際には、そうした言葉では恋の苦しみは少しも慰められない、と詠む。反実仮想によって、情けの言葉のむなしさを表している。
本巻の第六百八十八首で、思いを分かっているという言葉がかえって恨めしいと詠んだのと通い合い、言葉だけの情けでは慰められない恋を詠んでいる。
初句「あはれてふ」の「てふ」は「といふ」がつまった形で、「かわいそうに」という、の意である。
二句「情けに恋の」の「情け」は思いやりのことである。
三句「慰まば」は、慰められるならば、の意で、結句の「まし」と呼応している。
四句「問ふ言の葉や」の「問ふ」は、見舞う、便りをする、の意で、係助詞「や」は疑問を表し、結句の「まし」と係り結びをなしている。
結句「嬉しからまし」の「まし」は反実仮想で、嬉しいだろうに、の意で結ぶ。
てふ:といふ
とふ:見舞う、便りをする
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
播磨路や心の須磨に関すゑて いかで我が身の恋をとどめん
- 次の歌
-
物思へばまだ夕暮れのままなるに 明けぬと告ぐるしば鳥の声