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夢をなど夜ごろ頼まで過ぎ来けん
さらで逢ふべき君ならなくに

歌の意味
どうして夢での逢瀬を、幾夜も頼みにしないで過ごしてきたのだろう。夢でなくては逢うことのできるあなたではないのに。
鑑賞
恋歌 700

詞書は前の歌に続き「恋」
 夢でなければ逢うことのできない相手であるのに、どうしてこれまで幾夜ものあいだ、夢での逢瀬を頼みにせずに過ごしてきたのだろう、と悔やむ歌である。現実には逢えないと悟り、せめて夢に逢うことを頼りにしようとする、あきらめと切なさとを表している。
 本巻の第五百八十一首から第五百八十三首の「夢会恋」と同じく夢の逢瀬を詠み、恋の部の終わり近くで再び夢が取り上げられている。

 初句「夢をなど」の「など」は、どうして、の意で、三句の「けん」と呼応している。
 二句「夜ごろ頼まで」の「夜ごろ」は幾夜ものあいだのことで、「で」は打消の接続助詞である。頼みにしないで、の意である。
 三句「過ぎ来けん」の「けん」は過去の原因推量で、過ごしてきたのだろう、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「さらで逢ふべき」の「さらで」は、そうでなくて、の意で、夢でなくては、ということである。
 結句「君ならなくに」の「なくに」は、ないのに、の意で、上の句に返る倒置となっている。

よごろ:幾夜ものあいだ
さらで:そうでなくて
作者
西行
出典
山家集
前の歌
物思へばまだ夕暮れのままなるに 明けぬと告ぐるしば鳥の声
次の歌
さはと言ひて衣返してうち臥せど 目の合はばやは夢も見るべき