夏草の繁りのみゆく思ひかな
待たるるあきのあはれ知られて
- 歌の意味
-
夏草が茂ってゆくように、ただ募るばかりの思いであることよ。待たれる秋のあわれ、あの人に飽きられてゆくつらさが思い知られて。
- 鑑賞
-
恋歌 703
詞書は前の歌に続き「恋」
夏草がひたすら茂ってゆくように、恋の思いは募るばかりである。夏の盛りにあって、やがて来る秋のあわれが早くも思われるように、あの人の心に「飽き」が来るつらさが思い知られて、と詠む。「あき」に季節の秋と、心変わりの飽きとを掛け、季節の移ろいに恋の行く末への不安を重ねている。
次歌の第七百四首も「あき」に秋と飽きとを掛けており、二首が同じ掛詞によって並んでいる。
初句「夏草の」は、夏草が、の意で、茂るものとして詠まれる。
二句「繁りのみゆく」は、ひたすら茂ってゆく、の意で、思いの募るさまを夏草にたとえている。
三句「思ひかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「待たるるあきの」の「あき」は、季節の秋の意と、心変わりの飽きの意とを掛けた掛詞である。「るる」は自発の助動詞である。
結句「あはれ知られて」の「れ」は自発の助動詞で、自然と思い知られて、の意である。上の句に返る倒置となっている。
あき:季節の秋の意と、心変わりの飽きの意を掛ける
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
恋ひらるる憂き名を人に立てじとて 忍ぶわりなき我が袂かな
- 次の歌
-
紅の色に袂のしぐれつつ 袖にあきある心地こそすれ