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紅の色に袂のしぐれつつ
袖にあきある心地こそすれ

歌の意味
紅の涙の色に、袂が時雨に濡れるように濡れ続けて、袖にだけ秋が、あの人の飽きが来ている心地がする。
鑑賞
恋歌 704

詞書は前の歌に続き「恋」
 紅の涙が時雨のように袂を濡らし続け、紅葉の色に染まるように袖が紅く染まる。そのため、自分の袖にだけ秋が来ているような心地がする、と詠む。「あき」に季節の秋と、あの人の心の飽きとを掛け、紅涙に染まる袖を秋の紅葉に見立てながら、相手の心変わりを嘆いている。
 前歌の「待たるるあき」を受けて、この歌では袖にすでに「あき」が来ていると詠み、待たれていた秋が訪れたことを示している。

 初句「紅の」の「紅」は、鮮やかな赤色のことで、恋の嘆きで流す血の涙の色を表している。
 二句「色に袂の」は、その色に袂が、の意である。
 三句「しぐれつつ」の「しぐる」は、時雨が降る、また涙を流す、の意で、「つつ」は反復を表す。
 四句「袖にあきある」の「あき」は、季節の秋の意と、心変わりの飽きの意とを掛けた掛詞である。
 結句「心地こそすれ」は、心地がする、の意で、係助詞「こそ」と已然形「すれ」が係り結びをなしている。

しぐる:時雨が降る、涙を流す
あき:季節の秋の意と、心変わりの飽きの意を掛ける
作者
西行
出典
山家集
前の歌
夏草の繁りのみゆく思ひかな 待たるるあきのあはれ知られて
次の歌
あはれとて問ふ人のなどなかるらん 物思ふ宿の荻の上風