いかにせん来む世の海人となるほども
みるめ難くて過ぐるうらみを
- 歌の意味
-
どうしたらよいのだろう。来世で海人に生まれ変わるほど先になっても、海松布を刈るように逢う機会も得られないまま過ごしてゆく、この恨みを。
- 鑑賞
-
恋歌 708
詞書は前の歌に続き「恋」
来世で海人に生まれ変わるほど先の世になっても、海人が海松布を得られないように、恋しい人に逢う機会も得られないまま過ごしてゆくのだろう。その恨みをどうしたらよいのか、と詠む。「みるめ」に海藻の海松布と逢う機会の見る目とを、「うらみ」に恨みと浦見とを掛け、海人の縁で、来世にまで続く逢えない恋の恨みを詠んでいる。
初句「いかにせん」は、どうしたらよいのだろう、の意で、ここで句切れとなる初句切れの歌である。
二句「来む世の海人と」の「来む世」は来世、次に生まれ変わる世のことで、「海人」は海で漁をする人である。
三句「なるほども」は、生まれ変わるほどになっても、の意である。
四句「みるめ難くて」の「みるめ」は、海藻の海松布の意と、逢う機会の意の見る目とを掛けた掛詞で、海人の縁語である。
結句「過ぐるうらみを」の「うらみ」は、恨みの意と、浦を見る意の浦見とを掛けた掛詞で、初句に返る倒置となっている。
こむよ:来世、次に生まれ変わる世
あま:海で漁をする人
みるめ:海藻の海松布の意と、逢う機会の意を掛ける
うらみ:恨みの意と、浦を見る意を掛ける
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
秋深き野辺の草葉に比べばや 物思ふ頃の袖の白露
- 次の歌
-
物思ふと涙ややがて三瀬川 人を沈むる淵となるらん