つくづくと物を思ふにうち添へて
折あはれなる鐘の音かな
- 歌の意味
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しみじみと物思いにふけっているところに、さらに加わって、折も折、哀れ深く響いてくる鐘の音であることよ。
- 鑑賞
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雑歌 712
詞書「雑」
しみじみと物思いに沈んでいるところへ、ちょうどその折に鐘の音が響いてきて、いっそう哀れが深まる、と詠む。物思いと鐘の音とが重なり合い、心にしみる孤独なひとときを描いている。
雑の部の巻頭に置かれた一首である。恋の部の巻末である巻第五の第七百十一首も鐘の音を詠んでおり、恋の罪を消してくれる頼もしい鐘から、物思いをさらに深める哀れな鐘へと、同じ鐘の音で二つの巻がつながっている。
初句「つくづくと」は、しみじみと、つくづくと、の意で、物思いに沈むさまを表す。
二句「物を思ふに」の「物を思ふ」は、あれこれと思い悩むことで、「に」は、〜しているところに、の意を表す。
三句「うち添へて」は、さらに付け加わって、の意で、物思いの上に鐘の音が重なることを示す。
四句「折あはれなる」は、ちょうどその折にふさわしく哀れ深い、の意である。
結句「鐘の音かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、寺の鐘の音への感慨で結ぶ。
うちそふ:さらに付け加わる、重なる
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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頼もしな宵暁の鐘の音 物思ふ罪もつきざらめやは
- 次の歌
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情けありし昔のみなほ偲ばれて 長らへまうき世にもあるかな