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我が宿は山のあなたにあるものを
何に憂き世を知らぬ心ぞ

歌の意味
私の住むべき宿は山の向こうにあるというのに、どうしてこの憂き世のつらさを思い知らない心なのだろうか。
鑑賞
雑歌 716

詞書は前の歌に続き「雑」
 自分の住むべき宿は山の向こう、つまり俗世を離れた山中にあるのに、どうしてこの心は憂き世のつらさを思い知らず、世にとどまっているのか、と自らの心を問いただす歌である。遁世を志しながら俗世を離れきれない心の迷いを詠んでいる。

 初句「我が宿は」は、私の住まいは、の意で、本来住むべき所をいう。
 二句「山のあなたに」の「あなた」は向こう側の意で、山の向こうに、の意である。
 三句「あるものを」の「ものを」は逆接の接続助詞で、あるというのに、の意である。
 四句「何に憂き世を」の「何に」は、どうして、の意の疑問である。
 結句「知らぬ心ぞ」の「ぞ」は強めの終助詞で、思い知らない心なのか、と自らを問いつめて結ぶ。

うきよ:つらいことの多いこの世
作者
西行
出典
山家集
前の歌
何事も昔を聞くは情けありて ゆゑあるさまに偲ばるるかな
次の歌
曇りなう鏡の上にゐる塵を 目に立てて見る世と思はばや