古典和歌stream

思ひ出づる過ぎにし方を恥づかしみ
あるに物憂きこの世なりけり

歌の意味
思い出される過ぎ去った昔のことが恥ずかしいので、生きているのも気が重いこの世であることだ。
鑑賞
雑歌 719

詞書は前の歌に続き「雑」
 思い出される過去のことが恥ずかしく、そのために生きていることさえ気が重いこの世である、と詠む。過ぎた日々を省みる悔いが、現在の生のつらさにつながっている。

 初句「思ひ出づる」は、思い出される、の意である。
 二句「過ぎにし方を」の「過ぎにし方」は、過ぎ去った昔の意で、「にし」は完了の助動詞「ぬ」と過去の助動詞「き」である。
 三句「恥づかしみ」は、形容詞の語幹に「み」が付いた形で、恥ずかしいので、と理由を表す。
 四句「あるに物憂き」は、生きていることに気が重い、の意である。
 結句「この世なりけり」の「なりけり」は気づきの詠嘆で、そういうこの世であることよ、と結ぶ。

ものうし:気が重い、おっくうだ
作者
西行
出典
山家集
前の歌
長らへんと思ふ心ぞ露もなき 厭ふにだにも堪へぬ憂き身は
次の歌
世の中にすまぬもよしや秋の月 濁れる水のたたふさかりに