世の憂きにひかるる人はあやめ草
心のねなき心地こそすれ
- 歌の意味
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世のつらさに引かれて生きる人は、引き抜かれたあやめ草のように、心に根がないような気持ちがすることだ。
- 鑑賞
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雑歌 721
詞書「五日、菖蒲を人の遣はしたりける返事に」
五月五日の端午の節句に、人が菖蒲を贈ってくれたことへの返事の歌である。菖蒲は根を引いて用いるものであることから、世のつらさに引かれて生きる人は、引き抜かれた菖蒲のように心に根がない気持ちがする、と詠み、自らの寄る辺ない心を述べている。
初句「世の憂きに」は、世のつらさに、の意である。
二句「ひかるる人は」の「ひかるる」は、世のつらさに引きずられる意と、菖蒲の根を引く意とを掛けた掛詞である。
三句「あやめ草」は菖蒲のことで、贈られた品を詠み込んでいる。「あやめ」には物の筋目の意の「文目」が響く。
四句「心のねなき」の「ね」は、菖蒲の根と心の根とを掛けた掛詞で、心に根がない、の意である。
結句「心地こそすれ」は、係助詞「こそ」と已然形「すれ」による係り結びで、そういう気持ちがする、と強めて結ぶ。
ひく:世のつらさに引かれる意と、菖蒲の根を引く意を掛ける
あやめぐさ:菖蒲、端午の節句に根を引いて用いた
ね:菖蒲の根と、心の根を掛ける
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
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世の中にすまぬもよしや秋の月 濁れる水のたたふさかりに
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世の憂さを昔語りになし果てて 花橘に思ひ出でめや