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柴の庵と聞くはくやしき名なれども
世に好もしき住まひなりけり

歌の意味
柴の庵と聞くと、いかにも残念な名ではあるけれども、実に好ましい住まいであることだ。
鑑賞
雑歌 725

詞書「いにしへごろ、東山に阿弥陀房と申しける上人の庵室にまかりて見けるに、何となくあはれに覚えてよめる」
 以前、東山の阿弥陀房という上人の庵室を訪れ、何となく心ひかれて詠んだ歌である。「柴の庵」と聞けば、粗末で残念な名に思えるが、実際に見てみると、まことに好ましい住まいである、と詠む。出家以前の西行が、遁世者の簡素な暮らしにあこがれる心が表れている。

 初句「柴の庵と」は、柴で作った粗末な庵と、の意で、六音の字余りである。
 二句「聞くはくやしき」の「くやし」は、残念だ、つまらない、の意で、聞いただけでは残念な、の意である。
 三句「名なれども」は、名ではあるけれども、の意で、逆接で下の句に続く。
 四句「世に好もしき」の「世に」は、実に、まことに、の意の副詞である。
 結句「住まひなりけり」の「なりけり」は気づきの詠嘆で、実際に見て初めて好ましさに気づいた心を表す。

しばのいほ:柴で作った粗末な庵
作者
西行
出典
山家集
前の歌
世を厭ふ名をだにもさは留めおさて 数ならぬ身の思ひ出にせん
次の歌
世の中を背き果てぬと言ひ置かん 思ひ知るべき人はなくとも