古典和歌stream

世の中を背き果てぬと言ひ置かん
思ひ知るべき人はなくとも

歌の意味
世の中をすっかり捨て去ったと言い残しておこう。たとえ私の心を思い知ってくれる人はいなくても。
鑑賞
雑歌 726

詞書「世を遁れける折、ゆかりありける人のもとへ言ひ送りける」
 出家した折に、縁のある人のもとへ言い送った歌である。世の中をすっかり捨てたと言い残しておこう、たとえその心を思い知ってくれる人がいなくても、と詠む。出家の決意を告げる言葉に、理解されないかもしれない寂しさと、それでも揺るがない覚悟とがこもっている。
 この歌は新古今和歌集の雑歌にも収められている。

 初句「世の中を」は、俗世間を、の意である。
 二句「背き果てぬと」の「背く」は世を捨てて出家する意で、「果てぬ」は、すっかり〜してしまった、の意である。
 三句「言ひ置かん」の「ん」は意志の助動詞で、言い残しておこう、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「思ひ知るべき」は、心を思い知ってくれるはずの、の意である。
 結句「人はなくとも」の「とも」は逆接仮定の接続助詞で、たとえいなくても、と倒置によって三句を受けている。

そむく:世を捨てて出家する
作者
西行
出典
山家集
前の歌
柴の庵と聞くはくやしき名なれども 世に好もしき住まひなりけり
次の歌
月のみやうはのそらなる形見にて 思ひも出でば心通はん