- 歌の意味
- 何事に心がとどまるところがあったから、今さらまたこの世が厭わしく思われるのだろうか。
- 鑑賞
-
雑歌 729
詞書「述懐」
題「述懐」は、心の思いを述べる題である。世を捨てたはずなのに、何事かに心がとどまっていたからこそ、今あらためてこの世が厭わしく感じられるのだろう、と自らの心を省みている。世を厭う思いが繰り返されること自体に、まだ断ち切れない執着を見いだしている。
初句「何事に」は、どのようなことに、の意で、疑問を表す。
二句「とまる心の」の「とまる」は、心がとどまる、執着する、の意である。
三句「ありければ」は、あったので、の意で、理由を表す。
四句「さらにしもまた」の「さらに」は、改めて、今さら、の意で、「しも」は強めの副助詞である。
結句「世の厭はしき」は、世が厭わしいことよ、の意で、初句の疑問を受けて連体形で結んでいる。
とまる:心が引きとめられる、執着する
- 作者
- 西行
- 出典
- 山家集
- 前の歌
- 鈴鹿山憂き世をよそにふり捨てて いかになりゆく我が身なるらん
- 次の歌
- 驚かす君によりてぞ長き世の 久しき夢は覚むべかりける