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色変へて独り残れるときは木は
いつをまつとか人は見るらん

歌の意味
皆が衣の色を変えて出家したなかで、ひとり色を変えずに残っている常磐木のような私を、いつを待っている松だと人は見ているのだろうか。
鑑賞
雑歌 735

詞書「返し」
 前歌への藤原為業の返歌である。兄弟たちが墨染の衣に色を変えて出家したなかで、ひとり俗体のまま残っている自分を、常磐木の松にたとえ、いったいいつ出家するのを待っていると人は見ているのだろうか、と詠む。前歌の「ときは」を受けて、変わらない常磐木に自身をなぞらえている。為業ものちに出家し、寂念と号した。

 初句「色変へて」は、衣の色を変えて、の意で、兄弟たちが墨染の衣をまとって出家したことをいう。
 二句「独り残れる」は、ひとり残っている、の意で、出家せずにいる為業自身をいう。
 三句「ときは木は」の「ときは」は、地名の常盤と常磐木とを掛けた掛詞で、前歌の四句の「ときは」を受けている。
 四句「いつをまつとか」の「まつ」は、待つ意と、常磐木の松とを掛けた掛詞である。
 結句「人は見るらん」の「らん」は現在推量の助動詞で、人は見ているのだろうか、と結ぶ。

ときはぎ:一年中葉の色を変えない木、地名の常盤を掛ける
まつ:待つ意と、松を掛ける
作者
藤原為業
出典
山家集
前の歌
いにしへに変はらぬ君が姿こそ 今日はときはの形見なりけれ
次の歌
立ち寄りて柴の煙のあはれさを いかが思ひし冬の山里