潮馴れし苫屋も荒れてうき波に
寄る方もなきあまと知らずや
- 歌の意味
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潮に馴れ親しんだ苫屋も荒れ果てて、憂き波に寄るべもない海人、つまり身を寄せる所もない尼だとはご存じないのですか。
- 鑑賞
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雑歌 744
詞書「ある所の女房、世を遁れて西山に住むと聞きて、尋ねければ、住み荒らしたるさまして、人の影もせざりけり、あたりの人にかくと申し置きたりけるを聞きて、言ひ送れりける」
ある御所に仕えていた女房が出家して西山に住んでいると聞いて西行が訪ねたところ、住まいは荒れ果てて人の姿もなかった。近所の人に訪ねて来たことを言い置いて帰ったのを聞いて、その女房が言い送ってきた歌である。作者は「ある所の女房」とあるのみで誰かはわからない。荒れた苫屋に住む寄る辺ない海人に、身を寄せる所もない尼の境遇を重ねて、留守にしていた事情を伝えている。
初句「潮馴れし」は、潮に馴れ親しんだ、の意で、海辺の暮らしを表す。
二句「苫屋も荒れて」の「苫屋」は苫で屋根をふいた粗末な小屋で、荒れ果てた住まいをいう。
三句「うき波に」の「うき」は、波に浮く意と、憂きとを掛けた掛詞である。
四句「寄る方もなき」は、寄るべき所もない、の意で、身を寄せる所のない境遇をいう。
結句「あまと知らずや」の「あま」は、海人と尼とを掛けた掛詞である。「や」は疑問で、ご存じないのか、と結ぶ。
とまや:苫で屋根をふいた粗末な小屋
うき:浮きの意と、憂きの意を掛ける
あま:海人と尼を掛ける
- 出典
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山家集
- 前の歌
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世を背く心ばかりはありあけの つきせぬ闇は君に晴るけん
- 次の歌
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苫の屋になみたち寄らぬ気色にて あまり住み憂き程は見えにき