憂き世をばあらしの風に誘はれて
家を出でにし住みかとぞ見る
- 歌の意味
-
憂き世にはもういるまいと、嵐の風に誘われるようにして家を出た人の住まいだと見ることだ。
- 鑑賞
-
雑歌 747
詞書「あはれなる住みか訪ひにまかりたりけるに、この歌を見て書きつけける」
前歌の中納言の局のしみじみとした住まいを訪ねた待賢門院兵衛が、柱などに書きつけられた西行の歌を見て書き添えた歌である。兵衛は中納言の局の妹にあたるともいわれる。憂き世にはとどまるまいと、嵐の風に誘われて家を出た人の住まいなのだ、と前歌の「嵐」を受けて応じている。
初句「憂き世をば」は、つらいこの世を、の意である。
二句「あらしの風に」の「あらし」は、嵐と、この世に「あらじ」、いるまいの意とを掛けた掛詞で、前歌の「嵐の音」を受けている。
三句「誘はれて」は、誘われて、の意で、嵐の風に誘われて世を捨てたことをいう。
四句「家を出でにし」は、家を出た、の意で、出家したことをいう。
結句「住みかとぞ見る」の「ぞ」は係助詞で、「見る」と係り結びをなし、そういう人の住まいだと見る、と結ぶ。
あらし:嵐の意と、この世にあるまいの意の「あらじ」を掛ける
- 作者
-
待賢門院兵衛
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
山おろす嵐の音の激しさを いつ習ひける君が住みかぞ
- 次の歌
-
天降る名をふきあげの神ならば 雲晴れのきて光現せ