あればとて頼まれぬかな明日はまた
昨日と今日を言はるべければ
- 歌の意味
-
今日生きているからといって頼みにはできないものだ。明日になればまた、今日のことを昨日と言われるにちがいないのだから。
- 鑑賞
-
雑歌 766
詞書は前の歌に続き「題しらず」
今日生きているからといって、それを頼みにはできない、明日になれば今日は昨日と言われてしまうのだから、と詠む。今日という日もすぐに過去になってゆく時の移ろいに、命の頼りなさを見ている。前歌の「頼みもなき」を受けている。
初句「あればとて」は、生きているからといって、の意である。
二句「頼まれぬかな」の「れ」は可能の助動詞で、頼みにできないことだ、の意である。前歌の「頼みもなき」を受けている。ここで句切れとなる。
三句「明日はまた」は、明日になればまた、の意である。
四句「昨日と今日を」は、今日のことを昨日と、の意で、昨日と今日とを並べて時の移ろいを表している。
結句「言はるべければ」の「べけれ」は推量の助動詞「べし」の已然形で、言われるにちがいないので、と倒置によって二句の理由を示して結ぶ。
たのむ:頼りにする、あてにする
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
露の玉は消ゆればまたも置くものを 頼みもなきは我が身なりけり
- 次の歌
-
秋の色は枯野ながらもあるものを 世のはかなさや浅茅生の露