散ると見ればまた咲く花のにほひにも
遅れ先立つためしありけり
- 歌の意味
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散ったと見ると、またあとから咲く花の美しさにも、人の世と同じく、遅れたり先立ったりする例があったのだ。
- 鑑賞
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雑歌 772
詞書「花の散りたりけるに並びて咲き始めける桜を見て」
花が散ってしまったそばで、新たに咲き始めた桜を見て詠んだ歌である。散ったかと思えばまた咲く花の美しさにも、人の世と同じく、遅れて残る者と先立つ者との例があったのだ、と詠む。人の生死の順序の定めなさを、花の散ると咲くとに見いだしている。
「遅れ先立つ」は、遍昭の歌「末の露もとの雫や世の中の遅れ先立つためしなるらん」に見える語で、人の死の前後の定めなさをいう。
初句「散ると見れば」は、散ったと見ると、の意で、六音の字余りである。
二句「また咲く花の」は、またあとから咲く花の、の意で、初句の「散る」と対になっている。
三句「にほひにも」の「にほひ」は、色の美しさ、つややかさの意である。
四句「遅れ先立つ」は、後に残ることと先に死ぬことで、人の死の前後をいう。
結句「ためしありけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、そういう例があったのだ、と結ぶ。
にほひ:色の美しさ、つややかさ
ためし:例、先例
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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亡き人を霞める空にまがふるは 道を隔つる心なるべし
- 次の歌
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月を見ていづれの年の秋までか この世に我がちさりあるらん