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晴れやらぬ去年の時雨の上にまた
かき暗さるる山めぐりかな

歌の意味
晴れきらない去年の時雨の上に、さらにまた、山々をめぐる時雨で空が暗くかき曇らされることだ。
鑑賞
雑歌 788

詞書「返し」
 前歌への返歌で、作者は前歌の詞書にある「同じ嘆きし侍りける人」である。晴れきらない去年の時雨、すなわち去年の悲しみの涙の上に、さらにまた山々をめぐる時雨で空が暗く曇らされる、と詠み、重なる悲しみを時雨に託している。前歌の「去年も今年も」を受けている。

 初句「晴れやらぬ」は、晴れきらない、の意で、悲しみが消えないことをいう。
 二句「去年の時雨の」の「時雨」は、晩秋から初冬に降る通り雨で、涙をたとえている。前歌の「去年」を受けている。
 三句「上にまた」は、その上にさらにまた、の意で、前歌の「今年も」に応じている。
 四句「かき暗さるる」は、すっかり暗く曇らされる、の意で、悲しみに心が閉ざされることをいう。
 結句「山めぐりかな」の「山めぐり」は、時雨が山から山へと移りながら降ることで、「かな」の詠嘆で結ぶ。

しぐれ:晩秋から初冬にかけて降ったりやんだりする雨
やまめぐり:時雨が山から山へと移りながら降ること
出典
山家集
前の歌
君がため秋は世に憂き折なれや 去年も今年も物思ひにて
次の歌
思ひ出づる情けを人の同じくは その折訪へな嬉しからまし