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かくれにし君がみかげの恋しさに
月に向かひて音をや泣くらん

歌の意味
お隠れになった君のお姿が恋しくて、月に向かって声をあげて泣いているのだろうか。
鑑賞
雑歌 793

詞書「御跡に、三河の内侍候ひけるに、九月十三夜、人に代はりて」
 二条院が亡くなった後、その御所に三河内侍が仕えていたが、九月十三夜の名月の夜に、ある人に代わって三河内侍に贈った歌である。お隠れになった院のお姿が恋しくて、月に向かって声をあげて泣いておられるのだろうか、と内侍の悲しみを思いやっている。月が隠れることと院の崩御とを重ねている。

 初句「かくれにし」の「かくれ」は、貴人が亡くなる意と、月が隠れる意とを掛けた掛詞である。
 二句「君がみかげの」の「みかげ」は、院のお姿の意と、月の光の意とを掛けた掛詞である。
 三句「恋しさに」は、恋しさのあまり、の意である。
 四句「月に向かひて」は、月に向かって、の意で、詞書の「九月十三夜」の月をいう。
 結句「音をや泣くらん」の「音を泣く」は声をあげて泣く意で、「や」と「らん」が係り結びをなしている。

かくる:貴人が亡くなる意と、月が隠れる意を掛ける
みかげ:お姿の意と、月の光の意を掛ける
作者
西行
出典
山家集
前の歌
今宵君死出の山路の月を見て 雲の上をや思ひ出づらん
次の歌
わが君の光隠れし夕より 闇にぞ迷ふ月は澄めども