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色深き梢を見ても時雨れつつ
ふりにしことをかけぬ日ぞなき

歌の意味
色の深い梢を見ても涙の時雨を降らせながら、過ぎ去った昔のことを心にかけない日はない。
鑑賞
雑歌 798

詞書「返し」
 前歌への兵衛の局の返歌である。兵衛は待賢門院に仕え、女院の没後は娘の上西門院に仕えた女房で、第七百四十七首の待賢門院兵衛と同じ人である。色深い梢を見ても涙の時雨を降らせ、過ぎ去った昔のことを心にかけない日はない、と詠み、前歌の「時雨る」「昔の秋の色」を受けて、待賢門院の御代をしのぶ心を述べている。

 初句「色深き」は、紅葉の色の深い、の意で、前歌の結句「色を慕ひて」を受けている。
 二句「梢を見ても」は、木々の梢を見ても、の意である。
 三句「時雨れつつ」は、時雨が降るように涙を流しながら、の意で、前歌の三句「時雨るらん」を受けている。
 四句「ふりにしことを」の「ふり」は、古くなる意の「古り」と、時雨が降る意とを掛けた掛詞である。
 結句「かけぬ日ぞなき」は、心にかけない日はない、の意で、係助詞「ぞ」と連体形「なき」による係り結びで結ぶ。

ふる:古くなる意と、時雨が降る意を掛ける
こずゑ:木の枝の先
作者
上西門院兵衛
出典
山家集
前の歌
紅葉見て君がためとや時雨るらん 昔の秋の色を慕ひて
次の歌
いにしへはついゐし宿もあるものを 何をか今日のしるしにはせん