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涙をや偲ばん人は流すべき
あはれに見ゆる水茎の跡

歌の意味
亡き人をしのぶ人は、涙を流すにちがいない。これほどしみじみと見える筆の跡なのだから。
鑑賞
雑歌 804

詞書「はかなくなりて年経にける人の文を、物の中より見出だして娘に侍りける人のもとへ見せに遣はすとて」
 亡くなって何年もたった人の手紙を、物の中から見つけ出したので、その人の娘のもとへ見せに送るときに添えた歌である。亡き人をしのぶ人は涙を流すにちがいない、これほどしみじみと見える筆の跡なのだから、と詠み、娘の悲しみを思いやっている。

 初句「涙をや」の「や」は疑問の係助詞で、三句の「べき」と係り結びをなしている。
 二句「偲ばん人は」は、亡き人をしのぶであろう人は、の意で、娘をいう。
 三句「流すべき」は、流すにちがいない、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「あはれに見ゆる」は、しみじみと心を打つように見える、の意である。
 結句「水茎の跡」は筆跡の意で、体言止めで結ぶ。「水」は三句の「流す」の縁語となっている。

みづくきのあと:筆の跡、筆跡
作者
西行
出典
山家集
前の歌
あはれとも心に思ふほどばかり 言はれぬべくは訪ひこそはせめ
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乱れずと終り聞くこそ嬉しけれ さても別れは慰まねども