乱れずと終り聞くこそ嬉しけれ
さても別れは慰まねども
- 歌の意味
-
心乱れることなく臨終を迎えたと聞くのは嬉しいことだ。それでも別れの悲しみは慰められはしないけれども。
- 鑑賞
-
雑歌 805
詞書「同行に侍りける上人、終りよく思ふさまなりと聞きて、申し送りける」
西行とともに修行していた上人が、臨終の様子がよく、望んでいたとおりであったと聞いて、寂然が西行に申し送った歌である。この上人は第七百七十八首で病が詠まれた西住とされる。心乱れずに臨終を迎えたと聞くのは嬉しいが、それでも別れの悲しみは慰められない、と詠む。念仏のうちに往生を遂げたことを喜びながらも、友を失った悲しみを述べている。寂然は藤原頼業の法名で、西行と親しかった。
初句「乱れずと」は、心が乱れることなく、の意で、臨終の際に心を乱さず往生を願うことをいう。
二句「終り聞くこそ」の「終り」は臨終の意で、「こそ」は係助詞である。
三句「嬉しけれ」は、係助詞「こそ」の結びの已然形で、嬉しいことだ、の意である。ここで句切れとなる。
四句「さても別れは」は、それでも別れは、の意である。
結句「慰まねども」は、慰められないけれども、の意である。
をはり:臨終
どうぎやう:ともに仏道を修行する仲間
- 作者
-
寂然
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
涙をや偲ばん人は流すべき あはれに見ゆる水茎の跡
- 次の歌
-
この世にてまた逢ふまじき悲しさに 勧めし人ぞ心乱れし