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入るさには拾ふ形見も残りけり
帰る山路の友は涙か

歌の意味
山へ入るときには、拾い集めた遺骨という形見も残っていた。帰りの山路の友は、涙だけであろうか。
鑑賞
雑歌 807

詞書「とかくのわざ果てて、跡の事ども拾ひて、高野へ参りて帰りたりけるに」
 上人の葬送を終えて、西行が遺骨を拾い集めて高野山へ納めに参り、帰ってきたときに、寂然が贈った歌である。山へ入るときには拾った遺骨という形見があったが、帰りの山路では、ただ涙だけが友であろうか、と詠み、友を納めて帰る西行の悲しみを思いやっている。

 初句「入るさには」の「入るさ」は、入るとき、の意で、高野山へ入るときをいう。
 二句「拾ふ形見も」の「拾ふ形見」は、拾い集めた遺骨をいう。
 三句「残りけり」は、残っていた、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「帰る山路の」は、帰りの山路の、の意で、初句の「入るさ」と対になっている。
 結句「友は涙か」の「か」は疑問の終助詞で、友は涙だけであろうか、と結ぶ。

いるさ:入るとき
とかくのわざ:葬送のさまざまな儀式
作者
寂然
出典
山家集
前の歌
この世にてまた逢ふまじき悲しさに 勧めし人ぞ心乱れし
次の歌
いかにとも思ひ分かずぞ過ぎにける 夢に山路を行く心地して