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いにしへの形見になると聞くからに
いとど露けき墨染の袖

歌の意味
亡き人の形見になると聞くとすぐに、いっそう涙に濡れる墨染の袖であることよ。
鑑賞
雑歌 812

詞書「返し」
 前歌への西行の返歌である。亡き人の形見になると聞くとすぐに、墨染の袖がいっそう涙に濡れる、と詠む。前歌の「形見」を受け、故人を思う気持ちが新たにこみ上げてくることを述べている。

 初句「いにしへの」は、昔の、の意で、亡き人をいう。
 二句「形見になると」は、前歌の三句「形見には」を受けている。
 三句「聞くからに」の「からに」は、〜するとすぐに、の意である。
 四句「いとど露けき」の「いとど」は、いっそう、の意で、「露けし」は涙に濡れているさまをいう。
 結句「墨染の袖」は体言止めで、僧衣の袖で結ぶ。

つゆけし:露に濡れてしめっぽい、涙がちである
すみぞめ:墨色に染めた衣、僧衣
作者
西行
出典
山家集
前の歌
たぐひなき昔の人の形見には 君をのみこそ頼みましけれ
次の歌
亡き跡も今日まではなほ残りけるを 明日や別れを添へて偲ばん