頼もしき道には入りて行きしかど
我が身をつめばいかがとぞ思ふ
- 歌の意味
-
妹は頼もしい仏道に入って逝ったけれども、わが身に引き比べてみると、さてどうであろうかと思うことだ。
- 鑑賞
-
雑歌 816
詞書「返し」
前歌への寂然の返歌である。妹は頼もしい仏道に入って逝ったけれども、わが身をつねって引き比べてみると、本当に往生できたのかどうかと案じられる、と詠む。前歌の「頼もしからぬ」に「頼もしき」で応じ、自らの修行の不確かさに照らして妹の行く末を案じている。
初句「頼もしき」は、前歌の四句「頼もしからぬ」を受けている。
二句「道には入りて」は、仏道には入って、の意で、前歌の三句「道に入らで」に応じている。
三句「行きしかど」は、逝ったけれども、の意である。
四句「我が身をつめば」は、わが身をつねって人の痛さを知るように、自分に引き比べてみると、の意である。
結句「いかがとぞ思ふ」は、係助詞「ぞ」と連体形「思ふ」による係り結びで、どうであろうかと思う、と結ぶ。
みをつむ:わが身をつねって他人の痛みを思いやる、自分に引き比べる
- 作者
-
寂然
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
いかばかり君思はまし道に入らで 頼もしからぬ別れなりせば
- 次の歌
-
流れゆく水に玉なすうたかたの あはれあだなるこの世なりけり