消えぬめるもとの雫を思ふにも
誰かは末の露の身ならぬ
- 歌の意味
-
消えてしまったらしい根元の雫を思うにつけても、誰が葉末の露のようにはかない身でないことがあろうか。
- 鑑賞
-
雑歌 818
詞書は前の歌に続き「院の二位のつねみまかりける跡に、十首歌人々よみけるに」
十首の二首目である。根元の雫が消えたらしいのを思うにつけても、葉末の露のようにはかない身でない者などいない、と詠む。根元の雫を先に亡くなった二位に、葉末の露を残された人々にたとえ、誰もがいずれは消える身であることを述べている。
遍昭の歌「末の露もとの雫や世の中の遅れ先立つためしなるらん」を踏まえている。
初句「消えぬめる」の「める」は推定の助動詞「めり」の連体形で、消えてしまったらしい、の意である。
二句「もとの雫を」の「もとの雫」は、草木の根元に落ちる雫で、先に亡くなった人をたとえる。
三句「思ふにも」は、思うにつけても、の意である。
四句「誰かは末の」の「かは」は反語の係助詞で、結句の「ぬ」と係り結びをなしている。「末」は葉末の意で、二句の「もと」と対になっている。
結句「露の身ならぬ」は、露のようなはかない身でないことがあろうか、と反語で結ぶ。
もとのしづく:草木の根元に落ちる雫
すゑのつゆ:葉末の露
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
流れゆく水に玉なすうたかたの あはれあだなるこの世なりけり
- 次の歌
-
送り置きて帰りし野辺の朝露を 袖に移すは涙なりけり