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送り置きて帰りし野辺の朝露を
袖に移すは涙なりけり

歌の意味
亡き人を送り置いて帰ってきた野辺の朝露を、袖に移しているのは、実は涙であったよ。
鑑賞
雑歌 819

詞書は前の歌に続き「院の二位のつねみまかりける跡に、十首歌人々よみけるに」
 十首の三首目である。亡き人を野辺に送り置いて帰ってきたが、その野辺の朝露を袖に移しているのは、実は涙であった、と詠む。袖が濡れているのは野辺の露のためではなく、悲しみの涙のためだという趣向である。

 初句「送り置きて」は、亡き人を野辺に送って置いて、の意で、六音の字余りである。
 二句「帰りし野辺の」の「野辺」は葬送の地をいう。
 三句「朝露を」は、朝の露を、の意で、前歌の「露」を受けている。
 四句「袖に移すは」は、袖に移しているのは、の意である。
 結句「涙なりけり」の「なりけり」は気づきの詠嘆で、涙であったよ、と結ぶ。

のべ:野原、ここでは葬送の地
作者
西行
出典
山家集
前の歌
消えぬめるもとの雫を思ふにも 誰かは末の露の身ならぬ
次の歌
船岡の裾野の塚の数添へて 昔の人に君をなしつる