跡を訪ふ道にや君は入りぬらん
苦しき死出の山へかからで
- 歌の意味
-
残された人々の弔いによる道に、あなたは入ってしまったのだろうか。苦しい死出の山路にはかからないで。
- 鑑賞
-
雑歌 824
詞書は前の歌に続き「院の二位のつねみまかりける跡に、十首歌人々よみけるに」
十首の八首目である。残された人々の追善の弔いによって開かれる道に、故人は入ったのだろうか、苦しい死出の山路にかかることもなく、と詠む。遺族の供養によって故人が安らかに浄土へ導かれることを願っている。
初句「跡を訪ふ」の「訪ふ」は、弔う、供養する、の意で、後に残った人々が弔うことをいう。前歌の「後の世を訪へ」と通じている。
二句「道にや君は」の「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と係り結びをなしている。
三句「入りぬらん」は、入ってしまったのだろうか、の意である。ここで句切れとなる。
四句「苦しき死出の」は、苦しい死出の山の、の意である。
結句「山へかからで」の「で」は打消の接続助詞で、山にかからないで、と倒置によって三句を受けて結ぶ。
とふ:弔う、供養する
しでのやま:死者が越えてゆくという冥途の山
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
後れゐて涙に沈む古里を 魂の影にもあはれとや見ん
- 次の歌
-
名残さへほどなく過ぎばかなし世に 七日の数を重ねずもがな