古典和歌stream

跡偲ぶ人にさへまた別るべき
その日をかねて散る涙かな

歌の意味
故人の跡を偲ぶ人々とさえも、また別れねばならないその日を前もって思って、こぼれ散る涙であることよ。
鑑賞
雑歌 826

詞書は前の歌に続き「院の二位のつねみまかりける跡に、十首歌人々よみけるに」
 十首の最後の一首である。故人を偲んで集まった人々とも、法事が終われば別れなければならない、その日を前もって思って涙がこぼれる、と詠む。死別の悲しみに、残された人々どうしの別れが重なることを述べ、次の歌の詞書に続く散り散りの別れを予感させている。

 初句「跡偲ぶ」は、故人の跡を偲ぶ、の意である。
 二句「人にさへまた」の「さへ」は、〜までも、の意で、偲ぶ人々とまでも、の意である。
 三句「別るべき」は、別れなければならない、の意である。
 四句「その日をかねて」の「かねて」は、前もって、の意である。
 結句「散る涙かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、こぼれ散る涙を嘆いて結ぶ。

かねて:前もって、あらかじめ
作者
西行
出典
山家集
前の歌
名残さへほどなく過ぎばかなし世に 七日の数を重ねずもがな
次の歌
桜花ちりちりになるこのもとに 名残を惜しむ鶯の声