- 歌の意味
-
桜の花が散り、人々も散り散りになってゆく木の下で、名残を惜しんで鳴く鶯の声であることよ。
- 鑑賞
-
雑歌 827
詞書「跡の事ども果てて、散り散りになりけるに、成範、脩憲涙流して、今日にさへ又と申しけるほどに、南面の桜に鶯の鳴きけるを聞きてよみける」
院の二位の法事がすべて終わり、人々が散り散りになってゆく時に、二位の子である藤原成範と脩範が涙を流して、今日までもまた別れなければならないのかと言っていたところへ、南面の桜で鶯が鳴いたのを聞いて詠んだ歌である。桜の花が散り、人々も散り散りになる木の下で、鶯が名残を惜しんで鳴いている、と詠む。
初句「桜花」は、南面の桜の花をいう。
二句「ちりちりになる」は、花が散る意と、人々が散り散りになる意とを掛けた掛詞である。
三句「このもとに」の「こ」は、木の意と、二位の子である成範と脩範とを掛けた掛詞で、木の下に、子らのもとに、の意である。
四句「名残を惜しむ」は、別れを惜しむ、の意で、第八百二十五首の「名残」を受けている。
結句「鶯の声」は体言止めで、名残を惜しむように鳴く鶯の声で結ぶ。
ちりちり:花が散る意と、人々が散り散りになる意を掛ける
こ:木の意と、二位の子を掛ける
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
跡偲ぶ人にさへまた別るべき その日をかねて散る涙かな
- 次の歌
-
散る花はまた来ん春も咲きぬべし 別れはいつかめぐり逢ふべき