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あはれ知る空にはあらじわび人の
涙ぞ今日は雨と降るらん

歌の意味
哀れを知る空のせいではあるまい。悲しみに沈む人々の涙が、今日は雨となって降っているのだろう。
鑑賞
雑歌 830

詞書「返し」
 前歌への院少納言の局の返歌である。院少納言の局は院の二位に近い女房と見られるが、詳しいことはわからない。哀れを知る空のためではあるまい、悲しみに沈む人々の涙が今日は雨となって降っているのだろう、と詠む。前歌の「あはれ知る空」を受けつつ、雨は空の心ではなく人々の涙そのものだと切り返している。

 初句「あはれ知る」は、前歌の初句と同じ句で、相手の言葉を受けている。
 二句「空にはあらじ」の「じ」は打消推量の助動詞で、空のためではあるまい、の意である。ここで句切れとなる。
 三句「わび人の」の「わび人」は、悲しみに沈む人の意である。
 四句「涙ぞ今日は」の「ぞ」は係助詞で、結句の「らん」と係り結びをなしている。
 結句「雨と降るらん」は、雨となって降っているのだろう、の意で、前歌の「涙に雨を添ふる」を逆にとらえて結ぶ。

わびびと:悲しみに沈む人、つらい思いをしている人
作者
院少納言局
出典
山家集
前の歌
あはれ知る空も心のありければ 涙に雨を添ふるなりけり
次の歌
今朝いかに思ひの色のまさるらん 昨日にさへもまた別れつつ