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露深き野辺になりゆく古里は
思ひやるにも袖しをれけり

歌の意味
主を失って露の深い野辺のように荒れてゆく故郷の家は、思いやるにつけても涙で袖がしおれることだ。
鑑賞
雑歌 843

詞書「これは具して遣はしける」
 前の五首の返歌に添えて送った歌である。主を失って露の深い野辺のように荒れてゆく想空の旧居を、遠く思いやるだけでも涙で袖がしおれる、と詠む。第八百三十三首の「露しげき蓬が下」を受けて、訪れなくとも心は寄せていることを伝えている。

 初句「露深き」は、露が深く置いた、の意で、涙を暗示している。
 二句「野辺になりゆく」は、野辺のように荒れてゆく、の意である。
 三句「古里は」は、故人の住んでいた家は、の意である。
 四句「思ひやるにも」は、遠く思いやるにつけても、の意で、訪れなくても思っていることをいう。
 結句「袖しをれけり」の「しをる」は、濡れてしおれる意で、涙に濡れる袖を詠んで結ぶ。

しをる:濡れてぐったりする、しおれる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
御法をば言葉なけれど説くと聞けば 深きあはれは訪はでこそ思へ
次の歌
いづくにか眠り眠りて倒れ伏さんと 思ふ悲しき道芝の露