いとどいかに西へ傾く月影を
常よりもげに君慕ふらん
- 歌の意味
-
どれほどいっそう、西へと傾いてゆく月の光を、あなたはいつもよりも深く慕っていることだろう。
- 鑑賞
-
雑歌 853
詞書「同行に侍りける上人、月の頃天王寺に籠りたりと聞きて言ひ遣はしける」
ともに修行してきた上人が、月の美しい頃に天王寺に籠もっていると聞いて贈った歌である。天王寺の西門は極楽の東門に通じるとされ、西に沈む日や月を拝んで極楽を思う信仰があった。西へと傾く月の光を、上人はいつもよりもいっそう深く慕っていることだろう、と相手の信心を思いやっている。
初句「いとどいかに」の「いとど」は、いっそう、の意で、六音の字余りである。
二句「西へ傾く」は、西へと沈んでゆく、の意で、西方極楽浄土を思わせる。
三句「月影を」は、月の光を、の意である。
四句「常よりもげに」の「げに」は、いっそう、の意である。
結句「君慕ふらん」の「らん」は現在推量の助動詞で、あなたは慕っていることだろう、と結ぶ。
どうぎやう:ともに仏道を修行する仲間
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
木のもとに住みける跡を見つるかな 那智の高嶺の花を尋ねて
- 次の歌
-
西へ行くしるべと頼む月影の そらだのめこそかひなかりけれ