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さし入らで雲路をよきし月影は
待たぬ心ぞそらに見えける

歌の意味
差し込まずに雲の通い路を避けて通った月の光は、あなたが待っていないお心が、空にはっきりと見えたからである。
鑑賞
雑歌 855

詞書「かへし」
 前歌への西行の返歌である。月が差し込まずに雲の道を避けて通り過ぎたのは、あなたが待っていない心が空にはっきりと見えたからだ、と詠む。前歌の「月影」「そら」を受け、訪ねなかったのはあなたが待っていなかったからだ、と戯れて切り返している。

 初句「さし入らで」の「で」は打消の接続助詞で、差し込まないで、の意である。月が差し入ることと、訪ねて入ることとを重ねている。
 二句「雲路をよきし」の「雲路」は雲の中の通い路、「よく」は避ける意で、雲の道を避けた、の意である。
 三句「月影は」は、前歌の三句「月影の」を受け、西行自身をたとえている。
 四句「待たぬ心ぞ」は、あなたが待っていない心が、の意である。「ぞ」は係助詞で、結句の「ける」と係り結びをなしている。
 結句「そらに見えける」の「そら」は、空の意と、はっきりと、の意とを掛けた掛詞で、前歌の「そらだのめ」を受けている。

くもぢ:雲の中の通い路
よく:避ける
そら:空の意と、はっきりと表れる意を掛ける
作者
西行
出典
山家集
前の歌
西へ行くしるべと頼む月影の そらだのめこそかひなかりけれ
次の歌
広むらん法には逢はぬ身なりとも 名を聞く数に入らざらめやは