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寺造るこの我が谷に土埋めよ
君ばかりこそ山も崩さめ

歌の意味
寺を造るこの私の谷に、土を埋めてください。あなたほどの人だけが、山をも崩すことができるでしょう。
鑑賞
雑歌 858

詞書「定信の入道、観音寺に堂造るに、結縁すべきよし申し遣はすとて」
 定信の入道が観音寺に堂を建てるにあたり、西行に結縁してほしいと申し送ってきた歌である。定信の入道は書家として知られる藤原定信とする説があり、生光はその法名とされる。寺を造る谷を埋めるために、山をも崩すほどのあなたの力を貸してほしい、と詠み、西行に堂の建立への協力を求めている。

 初句「寺造る」は、寺を造る、の意で、詞書の「堂造る」を受けている。
 二句「この我が谷に」は、この私の谷に、の意で、堂を建てる観音寺の地をいう。
 三句「土埋めよ」は命令形で、土を埋めてください、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「君ばかりこそ」の「ばかり」は限定、「こそ」は係助詞で、結句の「め」と係り結びをなしている。
 結句「山も崩さめ」は、山をも崩すことができよう、の意で、西行の力の大きさを誇張して結ぶ。

けちえん:仏道と縁を結ぶこと、寺の建立などに助力すること
作者
生光
出典
山家集
前の歌
伝へ聞く流れなりとも法の水 汲む人からや深くなるらん
次の歌
山崩すその力ねは難くとも 心たくみを添へこそはせめ