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有り難き法にあふぎの風ならば
心の塵を払へとぞ思ふ

歌の意味
めったに出会えない尊い仏法に逢う、その扇の風であるならば、心の塵を払ってほしいと思う。
鑑賞
雑歌 864

詞書「心ざすことありて、扇を仏に参らせけるに、院より給はりけるに、女房承りて、包み紙に書きつけられける」
 西行が願うことがあって扇を仏に奉納したところ、院からその扇を賜ったので、院の仰せを受けた女房が包み紙に書きつけた歌である。院が誰を指すかについては定説を見ない。院とは退位した天皇である上皇の称である。めったに出会えない尊い仏法に逢う扇の風であるならば、心の塵を払ってほしい、と詠む。

 初句「有り難き」は、めったにない、尊い、の意である。
 二句「法にあふぎの」の「あふぎ」は、仏法に逢う意と、扇とを掛けた掛詞である。
 三句「風ならば」は、扇の風であるならば、の意である。
 四句「心の塵を」は、心の迷いや煩悩を塵にたとえたもので、風の縁で用いている。
 結句「払へとぞ思ふ」は、係助詞「ぞ」と連体形「思ふ」による係り結びで、払ってほしいと思う、と結ぶ。

あふぎ:仏法に逢う意と、扇を掛ける
ゐん:退位した天皇、上皇
作者
院
出典
山家集
前の歌
浅からぬ契りのほどぞくまれぬる 亀井の水に影映しつつ
次の歌
塵ばかり疑ふ心なからなん 法をあふぎて頼むとならば