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西へ行く月をやよそに思ふらん
心に入らぬ人のためには

歌の意味
西へと渡ってゆく月を、自分とは関わりのないものと思うのだろうか。その教えが心に入らない人にとっては。
鑑賞
雑歌 872

詞書「易往無人の文の心を」
 題「易往無人」は、無量寿経にある「往き易くして人無し」という文で、極楽浄土は往生しやすいのに、往こうとする人がいない、という意である。西へと渡ってゆく月を、仏の教えが心に入らない人は、自分とは関わりのないものと思うのだろうか、と詠み、往生の道が開かれていながら、それを求めない人々を嘆いている。前歌に続き、西へ行く月を極楽への導きとしている。

 初句「西へ行く」は、西へと渡ってゆく、の意で、西方浄土への導きを思わせる。
 二句「月をやよそに」の「よそ」は、自分とは関わりのないもの、の意である。「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と係り結びをなしている。
 三句「思ふらん」は、思うのだろうか、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「心に入らぬ」は、教えが心に入らない、の意で、題の「無人」に当たる。
 結句「人のためには」は、そういう人にとっては、と倒置によって三句を受けて結ぶ。

よそ:自分とは関係のないこと
作者
西行
出典
山家集
前の歌
夢覚むる鐘の響きにうち添へて 十たびの御名を唱へつるかな
次の歌
山川のみなぎる水の音聞けば せむる命ぞ思ひ知らるる