古典和歌stream

山川のみなぎる水の音聞けば
せむる命ぞ思ひ知らるる

歌の意味
山川にみなぎって流れる水の音を聞くと、急き立てられるように過ぎてゆく命のことが思い知られる。
鑑賞
雑歌 873

詞書「人命不停速於山水の文の心を」
 題「人命不停速於山水」は、人の命がとどまらないことは山の水の流れよりも速い、という経文である。山川にみなぎって流れる水の音を聞くと、急き立てられるように過ぎてゆく命のことが思い知られる、と詠む。激しく流れる水音に、命の速さを感じ取っている。

 初句「山川の」は、山の中を流れる川の、の意で、題の「山水」に当たる。
 二句「みなぎる水の」は、満ちあふれて流れる水の、の意である。
 三句「音聞けば」は、音を聞くと、の意である。
 四句「せむる命ぞ」の「せむ」は、急き立てる、迫る、の意で、題の「不停速」に当たる。「ぞ」は係助詞である。
 結句「思ひ知らるる」は、係助詞「ぞ」の結びの連体形で、自然と思い知られる、と結ぶ。

みなぎる:水が満ちあふれる
せむ:急き立てる、迫る
作者
西行
出典
山家集
前の歌
西へ行く月をやよそに思ふらん 心に入らぬ人のためには
次の歌
あだならぬやがて悟りに返りけり 人のためにも捨つる命は