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惑ひきて悟り得べくもなかりつる
心を知るは心なりけり

歌の意味
迷い続けてきて、悟りを得られそうにもなかった心、その心を知るのは、心そのものであったのだ。
鑑賞
雑歌 875

詞書「疏文に悟心証心心」
 題は、大日経疏にある「心を悟り心を証す」という文によるもので、悟るのも悟られるのもみな自らの心である、という教えである。迷い続けて悟りを得られそうにもなかった心を知るのは、ほかならぬ心そのものであった、と詠む。心が心を知るという教えを、平明な言葉で表している。

 初句「惑ひきて」は、迷い続けてきて、の意である。
 二句「悟り得べくも」は、悟りを得られそうにも、の意である。
 三句「なかりつる」は、なかった、の意である。
 四句「心を知るは」は、その心を知るのは、の意で、題の「悟心」に当たる。
 結句「心なりけり」の「なりけり」は気づきの詠嘆で、心であったのだ、と結ぶ。四句と結句で「心」を重ねている。

しよもん:経典の注釈書の文
作者
西行
出典
山家集
前の歌
あだならぬやがて悟りに返りけり 人のためにも捨つる命は
次の歌
闇晴れて心の空に澄む月は 西の山辺や近くなるらん