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こりもせず憂き世の闇にまがふかな
身を思はぬは心なりけり

歌の意味
懲りもせずに、憂き世の闇のなかに紛れて迷うことだ。わが身のことを思わないのは、ほかならぬ自分の心であったよ。
鑑賞
雑歌 879

詞書「深着五欲の文」
 題は、法華経方便品にある「深く五欲に着す」という文で、人々が色や声などの欲に深く執着していることをいう。懲りもせずに憂き世の闇のなかに迷っている、わが身のためを思わないのは、ほかならぬ自分の心であった、と詠む。欲に執着して迷う心を省みている。

 初句「こりもせず」は、懲りもしないで、の意である。
 二句「憂き世の闇に」は、つらいこの世の迷いの闇に、の意である。
 三句「まがふかな」の「まがふ」は、紛れる、迷う、の意で、「かな」の詠嘆で、ここで句切れとなる。
 四句「身を思はぬは」は、わが身のためを思わないのは、の意である。
 結句「心なりけり」の「なりけり」は気づきの詠嘆で、自分の心であったよ、と結ぶ。

ごよく:色、声、香、味、触の五つの対象に対する欲
作者
西行
出典
山家集
前の歌
花の香を連なる袖に吹きしめて 悟れと風の散らすなりけり
次の歌
法知らぬ人をぞ今日はうしと見る 三つの車に心かけねば