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いづくにか身を隠さまし厭ひても
憂き世に深き山なかりせ

歌の意味
どこに身を隠せばよいだろう。この世を厭うても、憂き世のなかに深い山がなかったならば。
鑑賞
雑歌 909

詞書は前の歌に続き「五首述懐」
 五首の二首目である。たとえこの世を厭うても、憂き世のなかに深い山がなかったならば、どこに身を隠せばよいだろう、と詠む。世を厭う者にとって、深い山こそが逃れ場所であることを述べている。

 初句「いづくにか」の「か」は疑問の係助詞で、二句の「まし」と係り結びをなしている。
 二句「身を隠さまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、身を隠せばよいだろうか、の意である。ここで句切れとなる。
 三句「厭ひても」は、世を厭うても、の意である。
 四句「憂き世に深き」は、つらいこの世に深い、の意である。
 結句「山なかりせ」は、本文に「なかりせ」とあり、読み仮名の行の「なかりせは」と一致しないが、本文の表記に従う。反実仮想の「なかりせば」の意に解し、深い山がなかったならば、と倒置によって二句を受けて結ぶ。

いとふ:嫌って避ける、厭う
作者
西行
出典
山家集
前の歌
身の憂さを思ひ知らでや止みなまし 背くならひのなき世なりせば
次の歌
身の憂さの隠れ家にせん山里は 心ありてぞ住むべかりける