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今宵こそあはれみあつき心地して
嵐の音をよそに聞きつれ

歌の意味
今宵こそは、お慈悲の厚さとともに、いただいた小袖の厚さを身に感じる心地がして、嵐の音をよそごとのように聞いたことだ。
鑑賞
雑歌 916

詞書「ことのほかに荒れ寒かりける頃、宮の法印、高野に籠らせ給ひて、この程の寒さはいかがとて、小袖給はせたりける又の朝申しける」
 ひどく荒れて寒かった頃、高野山に籠もっておられた宮の法印が、この頃の寒さはどうかと気づかって小袖をくださったので、その翌朝お礼に申し上げた歌である。宮の法印は崇徳院の皇子の元性とされる。今宵こそは、お慈悲の厚さを身に感じて、嵐の音もよそごとのように聞いた、と詠み、いただいた小袖への感謝を述べている。

 初句「今宵こそ」の「こそ」は係助詞で、結句の「つれ」と係り結びをなしている。
 二句「あはれみあつき」の「あつき」は、慈悲が篤い意と、小袖が厚い意とを掛けた掛詞である。
 三句「心地して」は、心地がして、の意である。
 四句「嵐の音を」は、嵐の音を、の意で、詞書の「荒れ寒かりける」を受けている。
 結句「よそに聞きつれ」は、係助詞「こそ」の結びの已然形で、よそごとのように聞いた、と結ぶ。

あつし:慈悲が篤い意と、小袖が厚い意を掛ける
こそで:袖口の小さい衣服
作者
西行
出典
山家集
前の歌
嵐のみ時々窓におとづれて 明けぬる空の名残をぞ思ふ
次の歌
露漏らぬ岩屋も袖は濡れけりと 聞かずはいかがあやしからまし