- 歌の意味
-
私が死んでいなくなったら、この里の人々は、秋の深い露を袂にかけて、涙ながらに私を偲んでくれるだろうか。
- 鑑賞
-
雑歌 926
詞書は前の歌に続き「風煩ひて山寺に帰りけるに、人々弔ひて、よろしくなりなばまた疾くと申し侍りけるに、おのおのの心ざしを思ひて/返しどもありけり、聞き及ばぬは書かず」
五首の三首目である。もし私が死んでいなくなったら、この里の人々は、秋の深い露を袂に置くように涙を流して、私を偲んでくれるだろうか、と詠む。見舞ってくれた人々の心づかいに、自らの死後を思い合わせている。
初句「我なくは」は、私がいなくなったら、の意で、死を思っている。
二句「この里人や」の「里人」は見舞ってくれた人々をいう。「や」は疑問の係助詞で、結句の「ん」と係り結びをなしている。
三句「秋深き」は、秋の深まった、の意である。
四句「露を袂に」は、露を袂に、の意で、露は涙をたとえている。
結句「かけて偲ばん」は、袂にかけて偲ぶだろうか、の意で、「かけ」は心にかける意も響かせている。
さとびと:里の人
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
あだに散る木の葉につけて思ふかな 風誘ふめる露の命を
- 次の歌
-
さまざまにあはれ多かる別れかな 心を君が宿にとどめて