何となく汲むたびに澄む心かな
岩井の水に影映しつつ
- 歌の意味
-
何ということもなく、汲むたびに澄んでゆく心であることよ。岩の間の泉の水に、自分の姿を映しながら。
- 鑑賞
-
雑歌 943
詞書は前の歌に続き「題しらず」
岩の間から湧く泉の水を汲み、そこに自分の姿を映すたびに、何ということもなく心が澄んでゆく、と詠む。澄んだ水と心とを重ね、山住まいの清らかな心境を述べている。
結句は、天王寺の亀井の水を詠んだ本巻の第八百六十三首の結句と同じ句で、霊水に姿を映す歌と、山の泉に姿を映す歌とが響き合っている。
初句「何となく」は、何ということもなく、の意である。
二句「汲むたびに澄む」は、汲むたびに澄む、の意で、水が澄むことと心が澄むこととを重ねている。
三句「心かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、ここで句切れとなる。
四句「岩井の水に」の「岩井」は、岩の間から湧き出る泉である。
結句「影映しつつ」は、姿を映しながら、と倒置によって三句を受けて結ぶ。
いはゐ:岩の間から湧き出る泉
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
入日さす山のあなたは知らねども 心をかねて送り置きつる
- 次の歌
-
水の音はさびしき庵の友なれや 峰の嵐の絶え間絶え間に