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来る春は峰に霞を先立てて
谷の筧を伝ふなりけり

歌の意味
やって来る春は、峰に霞を先立たせて、谷の筧の水を伝わって来るのであった。
鑑賞
雑歌 985

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 やって来る春は、まず峰に霞を先立たせ、それから谷の筧の水を伝わって来るのであった、と詠む。峰の霞と、雪解けで筧を流れる水とによって、山里に春が訪れるさまを、上から下への動きとして描いている。

 初句「来る春は」は、やって来る春は、の意である。
 二句「峰に霞を」は、峰に霞を、の意である。
 三句「先立てて」は、先に立たせて、の意である。
 四句「谷の筧を」は、谷から水を引く筧を、の意で、二句の「峰」と上下の対比をなしている。
 結句「伝ふなりけり」は、伝わって来るのであった、の意で、「なりけり」の詠嘆で結ぶ。

かけひ:竹などを渡して水を引く樋
作者
西行
出典
山家集
前の歌
小芹摘む沢の氷のひま絶えて 春めき初むる桜井の里
次の歌
春になる桜の枝は何となく 花なけれども睦ましきかな