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空渡る雲なりけりな吉野山
花もて渡る風と見たれば

歌の意味
空を渡ってゆく雲であったのだな。吉野山では、花を運んで渡ってゆく風かと見ていたのに。
鑑賞
雑歌 987

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 吉野山で、花を運んで渡ってゆく風かと見ていたのは、実は空を渡ってゆく雲であったのだな、と詠む。桜の名所の吉野山で、白い雲を風に舞う花と見誤った趣向で、花と雲との見立てを用いている。

 初句「空渡る」は、空を渡ってゆく、の意である。
 二句「雲なりけりな」の「なりけり」は気づきの詠嘆で、「な」は詠嘆の終助詞である。ここで句切れとなる。
 三句「吉野山」は、大和国の桜の名所である。
 四句「花もて渡る」は、花を運んで渡ってゆく、の意である。
 結句「風と見たれば」は、風かと見ていたので、と倒置によって二句を受けて結ぶ。

よしのやま:大和国の桜の名所
作者
西行
出典
山家集
前の歌
春になる桜の枝は何となく 花なけれども睦ましきかな
次の歌
さらにまた霞に暮るる山路かな 春を尋ぬる花の曙