古典和歌stream

雲もかかれ花とを春は見て過ぎん
いづれの山もあだに思はで

歌の意味
雲がかかってもよい。春はそれを花と見て過ぎてゆこう。どの山もおろそかには思わないで。
鑑賞
雑歌 989

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 雲がかかっていてもかまわない、春はそれを花と見て過ぎてゆこう、どの山もおろそかに思わないで、と詠む。花と雲との見立てを用い、春の山の雲をすべて花と見なして、どの山も慈しもうとする心を述べている。前の第九百八十七首の雲を花と見る趣向を受けている。

 初句「雲もかかれ」は命令形の放任で、雲がかかってもよい、の意で、六音の字余りである。
 二句「花とを春は」は、花として、春は、の意である。
 三句「見て過ぎん」の「ん」は意志の助動詞で、見て過ぎてゆこう、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「いづれの山も」は、どの山も、の意である。
 結句「あだに思はで」の「あだ」は、おろそか、いい加減の意で、おろそかには思わないで、と倒置によって三句を受けて結ぶ。

あだ:おろそか、いい加減
作者
西行
出典
山家集
前の歌
さらにまた霞に暮るる山路かな 春を尋ぬる花の曙
次の歌
雲かかる山見は我も思ひ出に 花ゆゑ馴れし睦び忘れず