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なれ来にし都もうとくなり果てて
悲しさ添ふる秋の暮かな

歌の意味
長年慣れ親しんできた都も、すっかり疎遠になってしまって、悲しさがいっそう加わる秋の暮れであることよ。
鑑賞
雑歌 1045

詞書「秋の末に、寂然高野に参りて、暮の秋に寄せて思ひを述べけるに」
 晩秋に寂然が高野山の西行を訪ね、暮れの秋に寄せて思いを述べ合った折の一首である。出家して高野に籠もるうちに、かつて慣れ親しんだ都もすっかり疎遠になり、そのことが暮れゆく秋の寂しさにさらに悲しさを添えている、と詠む。
 都への思いを断ち切ったはずの遁世者が、都から訪ねてきた友を前にして、かえって都との隔たりを実感している心情が読み取れる。季節の暮れと人生の移ろいとが重ねられた一首である。

 初句「なれ来にし」は、慣れ親しんできた、の意で、「にし」は完了と過去の助動詞である。
 二句「都もうとく」の「うとく」は、親しみが薄れて疎遠になるさまを表す。
 三句「なり果てて」は、すっかりそうなってしまって、の意である。
 四句「悲しさ添ふる」は、もともとの秋の寂しさにさらに悲しさを加える、の意である。
 結句「秋の暮かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、晩秋の夕暮れへの感慨で結ぶ。「秋の暮」は秋の終わりと秋の夕暮れの両方を響かせている。

うとし:親しみが薄い、疎遠である
作者
西行
出典
山家集
前の歌
今よりは昔語りは心せん あやしきまでに袖しをれけり
次の歌
君去なば月待つとても眺めやらん 東の方の夕暮の空