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峰おろす松の嵐の音にまた
響きを添ふる入相の鐘

歌の意味
峰から吹き下ろす松の嵐の音に、さらに響きを添える夕暮れの入相の鐘であることよ。
鑑賞
雑歌 1051

詞書「山家夕と云ふ事を人々よみけるに」
 人々が「山家の夕べ」という題で詠んだ折の一首である。峰から吹き下ろす松風の嵐の音に、夕暮れを告げる入相の鐘がさらに響きを重ねてくる、と詠む。
 山里の夕暮れの寂しさを、松風と鐘という二つの音の重なりによって描いている。音を重ねることで、かえって山家の静けさと孤独が深まる構成であり、前の第千四十九首で嵐の音がやんで水音が現れたのとは逆に、ここでは嵐の音に鐘の音が加わっている。

 初句「峰おろす」は、峰から吹き下ろす、の意で、嵐の勢いを表す。
 二句「松の嵐の」は、松を鳴らして吹く山風の、の意で、松風の寂しさを伴う。
 三句「音にまた」は、その音に加えてさらに、の意である。
 四句「響きを添ふる」は、響きを重ねる、の意で、鐘の余韻が嵐の音に重なるさまを表す。
 結句「入相の鐘」は体言止めで、夕暮れに寺でつく鐘の音を余韻として残している。

いりあひ:日の入るころ、夕暮れ
おろす:山から風が吹き下ろす
作者
西行
出典
山家集
前の歌
玉みがく露ぞ枕に散りかかる 夢驚かす竹の嵐に
次の歌
夕されや檜原の峰を越え行けば すごく聞こゆる山鳩の声