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波近き磯の松が根枕にて
うら悲しきは今宵のみかは

歌の意味
波の近い磯の松の根を枕にして、心悲しいのは今夜だけであろうか、いや、この旅の夜ごとそうなのだ。
鑑賞
雑歌 1053

詞書「海辺重旅宿」
 「海辺に旅宿を重ぬ」という題の一首である。波の打ち寄せる磯の松の根を枕にして旅寝をし、もの悲しく思うのは今夜だけではない、海辺の旅寝を重ねる夜ごとにそうなのだ、と詠む。
 題の「重ぬ」を、今夜だけではないという反語によって表し、海辺を旅する者の連日の孤独を描いている。「うら悲し」に「浦」を響かせて海辺の情景と心情とを結び付けている。

 初句「波近き」は、波が近くまで打ち寄せる、の意である。
 二句「磯の松が根」は、海辺の岩場に生える松の根で、旅寝の枕とするものである。
 三句「枕にて」は、枕として、の意で、野宿のわびしさを表す。
 四句「うら悲しきは」の「うら」は、心の意の「うら」に海辺の「浦」を掛けた掛詞で、心の奥から悲しい、の意を表す。
 結句「今宵のみかは」の「かは」は反語で、今夜だけであろうか、いやそうではない、と結ぶ。

うらがなし:心の中でなんとなく悲しい。「うら」に「浦」を掛ける
まつがね:松の根
作者
西行
出典
山家集
前の歌
夕されや檜原の峰を越え行けば すごく聞こゆる山鳩の声
次の歌
住吉の松が根洗ふ波の音を 梢にかくる沖つ潮風